41.父は船頭、私は船長、あなたはなんて呼びますか

回顧録編

 

もう父は亡くなっていますがふと昔の父との会話を思い出します。『○○の船頭は良かったなあ皆に釣らせた』私も子供の頃、船釣りに連れて行って貰った事があるが確か舟が小さくて船縁も低く便所は竹の棒が船下に向かって下がっていてその筒に我が息子を入れて様を足した記憶がある。父の話では釣り場に着いたら船頭が艪を漕いで舟を操った。当然潮先有利だが名船頭は全体の釣れ具合を見ながら帆先を自由に変え皆が平等な条件になるように釣らせたそうです。父は『船頭』と言呼び、私は船も大きくなり船の最高責任者に心から敬意を表して『船長』と呼んでいます。一緒に船に乗った時、父をよくよく観察すると人に話す時は『船頭』本人に話す時は必ず『船頭さん』と呼んでいた。私は間違っても『船頭さん』とは言わず役付き敬語の『船長』と呼んで通しています。それと昔は船頭も無口で色々とすぐには教えてくれず、父は同じ船宿に通って通ってハゼの『ノリやモタレ』の極意等を教わったそうです。今の釣船は客商売、豊かな設備を持った高速船で、船長は優しく親切に言葉巧みに釣り方等を説明する。またホームページや動画などで釣りの情報をどんどん発進していく。またライトタックルや一つテンヤの真鯛釣り等の様に新しい釣り方等に即、対応して行く。大変だと思います。昔からの江戸前の小物釣りを好む私としては釣果は兎も角、隣に座った方と会話がはずみ和やかな雰囲気で釣りが出来、船長ともジョークを飛ばしながら1日楽しく過ごせればそれでいいなと思います。ところであなたは船の最高責任者に対して何とお呼びですか?

 

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