17.浦安・吉久

1979年~2004年頃?までの話
真ダコ編

 

会社内でChoさんとOさんの話に耳を傾けると東京湾で真ダコが釣れている。釣った真ダコは絶品で実に美味かった。これを食べたらスーパーのタコなんて・・。私も食べてみたいと近くの船宿を調べたら浦安の吉久、電話で確認を取り出かけた。隣の吉野家と並び大型船宿でマダコや大アジ等の出る釣り物の大きな看板が道路際に掲げられ釣り人も多く活況を呈していた。Yaさんと呼ばれている名船長で仕掛けはいたってシンプル、手釣り用の渋糸にナイロン先糸1ヒロ、フック付サルカンを介して石ガニを縛ったテンヤ。最初はYaさんに餌付けしてもらい、釣場に到着後ひたすら小突きまくるも。タコの乗りがどうゆうものかわからずひたすら釣り続けた。昼も過ぎ第2海保周りで小突いていると重さを感じ合せる。ズシッとした手応えで500g級の真タコが釣れた。船長も見ていてくれ頷いている。嬉しい。今日はこれまでで帰宅後家族で食したが美味。自前の渋糸の手巻きをそろえ、通い始めるとYaさんにも顔を覚えられ、色々と教えてくれる。『足が2、3本取れてもそのまま、タコの臭いが付いているから、また乗るよ。カニがボロボロになったり嫌だったら新しいのに変えていいよ』等、他の人はだいたい人指し指第1関節に渋糸をおき親指で押える形で小突く、私は人差し指の腹の真ん中から指先に渋糸をおき小突く。乗りを感じたら左手の親指、人差し指、中指でつまみ再確認、体を船縁から乗り出し、出来るだけ水面近くの渋糸を右手人ざし指第1関節と親指で確りと押え力強く合わせる。その後2手目3手目と強く手繰る。小突き方も、小さく小刻みに小突く、ゆっくりと大きくリズミカルに小突く2通りがある。大貫から竹岡沖の根の激しい所は糸を緩めずテンヤを立て気味にすると根がかりをわりとかわせる。冬になると浦賀水道よりの深場に落ちる。深いので大きく小突く事等と色々覚えて行き、数もそこそこ釣れ、鼻もちょっと高くなってきた頃、小突くと乗りの感覚、合わせるとズシッその後軽くなるのバラシ、次も同様のバラシ、Yaさんも『あれっ、乗ったんじゃないの』上げての合図でテンヤを回収、良く見るとテンヤの危険防止のためのサックが付けたまま、その後は順調に乗り2杯損をした。またある時はテンヤを損失、船長にテンヤとカニを貰う。他の釣り人に乗りが訪れ、地合いか?慌ててカニを縛り、海へほおる。『船長テンヤちょうだい』Yaさんが『あれ、また?』テンヤにフック付サルカンを付けずにほおった。テンヤだけ海の底。『馬鹿だねー』吾ながらあきれ返る。その後は吉野大船長が19トンの大型新船でタコ船に乗る事になったが実に話術が巧み、マイクで『ほーら乗った左舷ミヨシ2番良い型だ、左のトモにも来たよ。皆小突いてよ。右舷ミヨシにも、ああバラッしちゃった。残念』てな具合に実況中継してくれみんなを上手くあおる。知らない内に手に力が入り夢中になる。ある時に船長室を覘かせてもらったが船長いわく『計器類が結構するんだよね。それといっぱい計器が付いていて俺にも良く解んない?』その後は船長も若い人に変わっても通い続ける。ここの手製弁当が安くて美味かった事。難点は船から上がっても車が詰まっていて直には出られない事。途中から家が奥に引っ込み駐車場が広くなり緩和された。吉野店主の息子船長とも良く話をする様になりとても楽しくなった。釣り物も太刀魚やエビメバル、息子を連れての鯊釣りと増えた。通って20年を過ぎた頃に社内で屋形船の案内チラシ、ガスメーカーと我々ディーラーとの親睦会Iw会で屋形船・浦安吉久。費用はメーカーと会社が半々、『ここ俺がゆく』『いいよ、女の子も2人連れて行って』で浦安駅から送迎バスで到着Iw会幹事A課長に挨拶、店に入ろうとしたら幹事が『トイレはこっちだよ』店に入って店主に挨拶すると『いつもは釣りの格好をしているが、スーツ姿だと見違えちゃうね。始め誰だかわかんなかったよ』屋形船へ行くとYaさんと息子船長が法被を着て出迎えてくれたが、私の背広姿にびっくりしていた。出る料理特に天麩羅が美味しく、女子社員も楽しめた様だ。吉久の看板は真ダコもそうだが大アジもあり、一時会社の同僚Saさんを誘い吉久のタコ釣りに来ていたが彼が大アジにはまり、社内釣りクラブの会長兼師匠でもある私をやたら誘う。私は『嫌だ』を連呼していたが仕方なく1回付き合う事にした。東京湾口を出た所の水深100m前後のビシ釣り。大アジが掛かり面白いが恐れていた事が起こった。ミヨシの釣り人が糸をふけさせた(糸が太いのか?)トモの方にいる我々も巻き添えを食らった。各自、自分の道糸を切り、そそくさと釣りを再開している。私の所には道糸の団子が来た。良く見ると私の道糸も切られている。断腸の思いで高切れの道糸を切る。彼Saさんは私が腹を立てている事をまだ理解していない。この電動リールには烏賊釣り専用にブラウン系のPE4号がマッサラな状態で300m巻いてある。高切れで糸が足りない、糸と糸を結んで足すのもいや。で結局この糸を破棄、新しく300mを巻きお直した。予想通りの結果で自分に腹が立つ。もう安易に妥協はしないと。そんな訳で私はタコ釣りのみに集中です。ただ釣りをする皆さんにとっては吉久の様な船宿は釣り物の魚種が多くそれも季節ごとに旬の魚を狙って行く、とても便利な良い船宿である。そんな訳で一つの魚種タコしか狙わない私にとっては初夏の一時か師走に狙う。タコの魚影も薄くなった気がし足が段々と遠のく。 

 

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