1.『達磨さんが転んだ』

2005年頃の話

 

息子が子供の頃によく暁埠頭公園(昔の13号埋立地)へ一緒にセイゴ釣りに出かた。1980年頃の話になるが、金沢八景荒川屋の常連で某釣り雑誌に『カレイ釣りの神様』と言われた故kk氏との出会いがここから始まる。話をもとに戻しますがその後、大人になった息子も単独でシーバス釣りに行っていたようだ。その息子が『父さん猫がいるから気をつけて』と訳のわからない事を言っていたが、気にも止めなかった。磯竿に電気ウキ(リチューム)タナ約1ヒロで青イソメをつけ釣り開始、徐々に夕まずめを向える。早々にウキが沈み合わせ、20cm級のセイゴが釣れリリース、周りを見

わたすと猫が2~3匹何処からともなく現れてあたかも名人の後ろ姿を見守っているかの様子、ボツボツ釣っては逃がししている内、手応えのあるセイゴが掛かりそのままぬき上げ地面に落した。その瞬間目にも止まらぬ速さで猫が魚を銜えて走り出した。竿が弓なりに『アッ、折れる?』ハリスが切れて竿は無事で息子の『猫がいるから気をつけて』の意味がわかった。周りの猫を追い払い釣りを開始するも名人の処に何故か猫が寄ってくる。後ろを振り向くと猫の足がピタリと止まり前を向くと少しずつ近づいて来る。後ろを向くと止まる。追っ払ってもまた同じで、まるで『達磨さんが転んだ』をやっているようだ。その内に子猫が名人の足にまとわり付き『ミャーミャー』言って邪魔をする。まとわり付いた子猫にセイゴを投げると側にいた他の猫がかっさらって行く。名人は釣りを楽しんでいるだけだが、彼らにとっては今晩の夕食が掛かっているのだろう。周りも暗くなってきており何度か魚を取られている子猫に『待っていろ、次はちゃんと上げるから』と小ぶりのセイゴを暗くなった周りに猫がいないのを確認し与えると『よかったわねえ』その声にドキッ。暗くなった近くのベンチでカップルが一部始終を見ていたのである。名人恥ずかしいやら照れくさいやらで納竿した。

 

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